第6章 孤城の吸血鬼
クロウリーの領地は不気味なものだった。気味が悪い銅像、何かの奇声。
「機嫌直してくださいよリオ」
『………。』
正直アレンの顔を見たくない。のぞき込まれたが、私はばっとラビの方に顔を逸らした。
「あーあ。無理やり連れていこうとするから。アレン嫌われちゃったさぁ。」
「はぁ!?ラビだって一緒についてきて欲しいっておもってたくせに何言ってるんですか!」
「なっ!?そんなこと誰もいってねぇだろ!!」
私を挟んで騒ぐ二人。私はげんなりとしながら、ふとアレンの手を見た。既に左の手袋は外されている。そしてラビの手を見た。既に槌を持っている。………。なんだ二人も怖かったのか。私はおかしくなって笑った。
『分かった。許してあげる。二人とも怖いならそう言えばいいのに。ふふっ。』
「「なっ!?」」
『怖いなら手をつないで歌でも歌おうか。』
ニヤニヤと二人を見る。仕返しは2倍返しだ。リナリーやブックマンにもその話をしよう。フフフフ。
「おっ、俺は怖くなんかないさ」
ラビがそういった途端、ゾクリとしたものが背中を走った。
私たちは身構えた。後ろを歩いていた村人達が不思議そうに首をかしげた。
「どうかしました?」
「シッ。……何かいるぞ」
「近づいてくる」
ガサガサと葉が揺れる。何か黒いものがこちらへ向かってきたのが分かった。その人影は歯をキラリと光らせている。
『出たぁぁぁぁ!!!!』
「出た!?」
私は退いたが、アレンたちは気づいていないようだ。私が指さした方を見るが、その影はアレンたちをすごいスピードで通り過ぎた。そして、その人影は私を捕まえた。
『いやぁぁぁ!?』
「リオッ!」
近くでジュルジュルと血を吸う音が聞こえる。私はゾッとした。しかし、吸われているのは私ではなかった。
「フ、フランツがやられたぁぁ!!出た!アレイスター・クロウリーだ!」