第4章 不可解な夢と自分の力
せんねんこう?ハート?わけがわからない言葉が並べられる。
「おー。俺が歌ってたやつちゃんと覚えてくれたんだな。痛めつけた時、根気強く歌った甲斐があったぜ。あー、生きててよかった。殺さないように痛めつけるのも楽じゃなかったんだぜ?」
『………せんねんこうって?ハートって何!?』
「…お嬢さんはもう知らなくていいことだ」
ゾクッとしたものを男から感じる。私は睨み返した。
「肝が据わってるなぁ。なーんか殺すの勿体ない気がしてきたぜ。……あ!お嬢さんがコイツの代わりにつたえてくれればいっか!」
男が笑顔になり、ケビン元帥の所に近づく。ケビン元帥は歌い続けたままだ。
『え?……何を…』
ドスッ!鈍い音が響き、ケビン元帥の口から血が見えた。
「さて。俺は女を痛めつける趣味はないんだよな。おいアクマ共。殺すなよ。」
「ひゃほーい!!」
「悪いね。これも命令でさ。だが心配はいらない。大好きな仲間達が先に待っててくれてるからさ。」
……ベン。……ラック。私は涙で霞んだ視界で二人を見た。彼らの姿が思い浮かんだ。
「リオ」
優しい彼らが好きだった。辛く悲しいことがあってもそばにいてくれた。大きな手で頭を撫でてくれた。叱ってくれた。褒めてくれた。寂しくないように話しかけてくれた。遊んでくれた。
「リオ」
生きる術を知らない私にすべてのことを教えてくれた。温かみを教えてくれた。優しさを教えてくれた。笑顔を教えてくれた。
「「リオ」」
大好きだった。血のつながりはないけど確かに私の家族だった。本当に大好きだった。守ってくれた。でも私は彼らに何も……何もまだ返せていない。
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
私は泣き叫んだ。ただ泣き叫んだ。もうどうでも良かった。私の中で咲いていた桜が…枯れた気がした。