第4章 不可解な夢と自分の力
「お前、体調悪かったのか?」
ラックからも同じようなことを言われた。私はよっぽどひどい顔をしていたのだろう。
『夢見が悪かっただけだから。』
私はそう言って笑ったが、心の中は何やら嫌なものが渦巻いていた。私はこのまま逃げ出したいくらいだった。そんな私の頭をぽんっと叩いたのは、ラックだった。
「どうした?心配事でもあるのか?」
いつになく優しい声に、涙が出そうになった。
『………大丈夫。元帥に会えば吹き飛ぶよ。』
「そうだな。…ん?なんだあの人だかり」
ベンが指さした方向は、私たちが落ち合う場所だった教会。教会は人が集まるところとはいえども、あの人数は異常だった。
「ひ、人が!」
「おい!早く警官を…」
様子を伺おうにも人で見えなかった。私はその辺にある台に登った。
『……あ……れは……』
その光景に私は目を疑った。周りの十字架に吊るされていたのはファインダー。そして真ん中の大きな十字架に吊るされていたのは……
「ケ……ケビン元帥!?」
私は柱をつたって彼らの元へ行った。ケビン元帥は裏向きに十字架に吊るされ、上半身は裸。その剥き出しの背中には神狩りと彫られていた。
他のファインダーたちはケビン元帥と共にした者の他に、あの神隠しの時に姿を消した者達も。彼らは一目で既に息をしていないことは分かった。
『ケビン元帥!!』
唯一、息のあるケビン元帥を下ろし、私は声をかけた。彼の意識はなかった。
「リオっ!」
二人がやっと人をかき分けて駆けつけた。死んだファインダーたちを一瞥し、ケビン元帥の怪我の状態を見た。
『すぐに病院に連れていかないと。』
かろうじて生きている元帥は、いつ死んでもおかしくなかった。
「ああ。」
ケビン元帥はベンに頼み、私たちはざっとファインダーたちの荷物を探った。しかし所持しているはずのイノセンスは一つもない。
『ケビン元帥はイノセンスを持っていなかった。じゃあ、イノセンスは……』
元帥たちは適合者探しも含めて複数のイノセンスを持っている。確かケビン元帥は8個所有していたはず。
「……アクマに奪われたか。なら、もうここにとどまる必要は無いな。ベンのところに行くぞ。」
『うん』
ファインダーたちを弔ってあげたいが、ケビン元帥たちを襲ったアクマがいないとも限らない。私たちは足を早めた。