• テキストサイズ

るろうに剣心【京都編】

第1章 新たな物語




藤田さんを今に案内しようとしたら、道場で待つというから、道場に通した。
お茶を淹れている間、弥彦君が道場で彼の話し相手となっている。

緋村さんを狙っているという人が左之助さんにけがをさせたに違いないだろう。
本当は今すぐに緋村さんを捜しに行きたいけど、緋村さんとかかわりのある人を傷つけるのであれば、外に出るのは得策ではない。
今はじっと緋村さんの帰りを待つしかないのだろう。

『お待たせしました。お茶です』

道場に行き、淹れたてのお茶を藤田さんに渡す。
一言お礼を言い、一口お茶を啜る。
左之助さんの様子でも見ようと思い、道場を出ようとした時、藤田さんが話しかけてきた。

「さん、と言いましたか」
『はい、そうですけど……』
「あなたは一体何者ですか」

どくりと血液の流れが変わる。
心臓が跳ねあがり脈が速くなる。

『そ、それはどういう意味ですか?』
「いえ。緋村さんと関わりのある人物を調べていたのですが、あなたの戸籍だけが見当たらなくてですね」
『……』
「生まれも育ちもないとなると、不振がるのは警察としては当たり前でしょう」

藤田さんの細い目がうっすらと開く。
その瞳の奥にある威圧感が、私の全身に突き刺さる。
私が何も言えずに、立ちすくんでいると藤田さんはにっこりと笑って、

「今は聞かないことにしときますよ」

解き放たれた緊張感から逃げるように私は道場を後にした。
怖いと思った。
あの人はただの警察官ではないような気もした。
じゃなかったら、あんな人を殺すような目はしないはずだ。
手足の先が冷たくなっていくのがわかる。
私は今目の前にいるこの警察官に恐怖を抱いている。

と、その時道場の扉が開いた。
そこを振りかえってみると、入ってきたのは緋村さんと薫さんだった。
安心して緊張から抜けられた。
そう思った。

「お前も随分弱くなったもんだ」

まるで昔から緋村さんのことを知っているかのような口ぶりに私の心臓は再び脈打つ。
嫌な予感が脳裏を横切る。
冷や汗が顎を伝って床に落ちた。



/ 34ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp