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るろうに剣心【京都編】

第1章 新たな物語




目が覚めると、私は自分の部屋の布団で寝ていた。
先ほどまで、道場にいたはずなのに。
記憶を探り納得する。

私は左之助さんと自分の死を重ねて倒れたのか。
情けない。
まだ自分の死に向き合ていないというのか。
死を望んだのは私自身のはずなのに、こうして思い出して倒れるなんて、私は本当にどうしようもない人間だ。

私は体を起こし、部屋を出る。
左之助さんはどこの部屋に運ばれたのだろうか。
そもそもまだ治療しているのではないか。
心の中で渦巻く不安を抱きしめながら、私は廊下を歩く。
すると一室から灯りが漏れていて、薫さんや恵さんの声がする。
どうやら治療は終わっているらしい。
そして幸いにも左之助さんは一命を取り留めたという。
私は安堵の溜息を吐いた。
よかった、佐之助さん生きてる。
自然と溢れる涙を抑えきれずに泣いていると、部屋の襖が開いた。

「!起きたのね。体調は大丈夫?」
『うん。心配かけてごめんなさい』
「気にしなくていいわ」

優しい笑顔を向けてくれる薫さん。
私の抱えていた不安は、それによって掻き消えた。

どうやら左之助さんの傷は深かったものの、大事な組織や器官は破壊されていなかったと恵さんは言った。

「しばらくすれば起きるわよ」

そう言った恵さんの言葉から3日が経った。
だけど、左之助さんが目覚める気配はない。
そして緋村さん。
緋村さんもまた、左之助さんが怪我を負ってからずっと道場で何かを考え込んでいる。
どうしたのか、と聞いてもはぐらかされたからきっと触れてほしくない話題なのかもしれない。

次の日。
薫さんと一緒に洗濯物を干しておると警官が道場にやってきた。
どうやら緋村さんに用事があるらしい。

「未確認ながら緋村さんを狙っている輩がいるとの情報が、警察の方に入りまして……。失礼ですが、少し待たせてもらってもかまいませんか」

緋村さんは先ほど用事があると言って出て行ってしまった。
その間に何かあるかもしれない、そう思うと呼吸が浅くなる。
それは私だけではなく薫さんも同じようで、洗濯物を持つ手が震えている。
私はその手を握り、「大丈夫」とだけ言った。


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