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るろうに剣心【京都編】

第1章 新たな物語





「最後に闘ったのは確か鳥羽伏見の戦場だったから大体…十年ぶりか」

十年ぶり……。
緋村さんとこの人は昔からの知り合いなのだろうか。

「そうか。今は藤田五郎と名も変えたのか。

新撰組三番隊組長斎藤一」

その場にいた、私や薫さん弥彦君は目を見開いた。
目の前にいる警察官は新撰組の一人だなんて。
授業で習った。
新撰組は日本史史上最強だった剣客集団だと。
そんな集団と緋村さんは剣を交わしたことがあるという。

緋村さんは言った。
昔の斎藤一はつかみどころのないしたたかさを持っていた。
だけど闘うとなれば正々堂々と真向勝負を挑んできたと。

「敵の友人を傷つけ動揺を誘ったりかませ犬をぶつけてそのスキに人質を取ろうとしたりなどと姑息な小細工は一切しなかった。今のお前はもはや拙者が"士"と認めた"斎藤一"ではござらん」

緋村さんの言葉に斎藤さんは声を出して笑う。
何がそんなにおかしいのか、眉を眉間に寄せて彼を見る。
ひとしきり笑ったあと斎藤さんは言った。

"不殺の流浪人"という肩書が緋村さんを昔よりも弱くしていると。

「今の拙者は自分の目に映る人を守れる"流浪人"としての強さがあればそれでいい。人を殺める"人斬り"としての強さなどもう必要ござらん」
「流浪人としての強さ…ねえ。だとしたら今のお前は"流浪人"すら失格だよ。お前が俺の策にはまって赤末に苦戦している間、俺はずうっとここにいた。そして警官だということでここの連中は誰一人として全く警戒しなかった。つまり殺ろうと思えばいつでも殺れたという訳だ」

そう言って斎藤さんは日本刀を抜いた。
確かに斎藤さんの言う通りだ。
私たちは警官と言うだけで安心しきっていた。
疑うこともせずに。

斎藤さんは続けて言う。
刃衛や観柳のときも目に映る人を敵の手に取られて、挙句には雷十太のときは一生ものの傷をつけたと。

雷十太のときは警察は関与していないはずなのに、なぜこの人はそれを知っているのか。
答えはすぐに見つけだせ。
この人はきっと前から緋村さんのことを追っていた。
しかも警察という立場ではなくきっと個人とし。

「半端な強さなど無いに等しい。口先だけの偽善者の言葉など胸糞悪くなるだけだ」
「ぬかせ!それでも剣心がいたからこそ誰一人死人が出ていねーんだろーが!」
「だがこれからもそううまくいくとは限らんだろう」


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