第4章 いざ、京都へ
志々雄真実は指を鳴らし、隠し通路から部屋を出て行った。
出て行く際、刀を斎藤さんの隣にいた少年に投げ渡していた。
そして気が付いた。
あの男の子は、大久保さんを殺して私に傷を負わせた人だ。
でも気配なんてなかった。
気配だけじゃない。
殺気も剣気も闘気も感じない。
緋村さんは刀を納刀し構えの姿勢を取る。
抜刀術。
後の先が取れない相手なら、自分の最速の剣で先の先を取るのが最良策。
緋村さんと少年の間に緊迫した空気が漂う。
お互いに刀に手をかけ、鞘の鯉口部分に触れる。
そして一気に剣を引き抜いた。
剣速は互角。
キィン。
高い音が部屋中に響いた。
緋村さんの刀が折れて宙に舞い、床に突き刺さった。
「勝負あり―――かな?」
少年は楽しそうに笑っていたが、斎藤さんは少年に向かって
「お互い戦闘不能で引き分けってトコだな」
少年の持っていた刀はひび割れていた。
「この勝負確かに勝ち負けなしですね。今日は、これで失礼しますけど、出来たらまた闘って下さい。その時までに新しい刀用意しておいてくださいね」
少年は緋村さんに背を向けて、志々雄真実の後を追うために隠し通路へと歩き出す。
部屋を出る直前、少年と目が合った。
「生きていたんですね。殺したと思ったんだけどな。まあ、貴女とも今度闘ってみたいものです」
どういう感情でそれを言っているのかがわからない。
人は喜怒哀楽の感情があるはずなのに、彼からはその感情が伝わってこない。
変な汗が背中を伝った。