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るろうに剣心【京都編】

第3章 決断





道らしい道はなくて、草や木の枝などを避けながら歩いていると、槍を持った男が地面に座っている少年と少女にそれを向けていた。
このままでは殺されると思った瞬間、目の前の斎藤さんが刀を抜いてその男に突き刺していた。

早すぎて、抜刀した瞬間さえ見えなかった。
立ちすくんでいる自分に気が付いて、私は二人に駆け寄る。
見る限り怪我はしていないようだけど、男の子の方は瞳から大粒の涙を零して、震えている。
何が起きているかわからなくて、顔を上げるとそこには何十人もの男に囲まれた緋村さんがいた。

「緋村さん……」

無意識に彼の名を呼んでいた。
たった三日だ。
たった三日顔を見ていないと言うだけで、久しぶりに緋村さんを見たような気がする。
恋い焦がれるこの感情。
胸が熱い。

「殿……!!」

周りにいた敵を全部倒した緋村さんは、斎藤さんと私の存在に気が付く。
大きく見開かれた瞳には困惑の色が伺えた。

「足手まといなのはわかっています。だけど、私は大久保さんが殺される直前まで彼と一緒にいました。大久保さんを護れる可能性があったのに、私にはそれができなかった。それに私は志々雄一派の一人と遭遇しています。見過ごすことなんかできません」

そう。
あの時の私は何もできなかった。
あの時だけじゃない。
いつもいつも大事な場面で私は役立たずだ。
だけど、今回ばかりはそうは言っていられない。
私はもうこの事件に関わってしまっているのだから。

私が志々雄一派と遭遇したことを知った緋村さんは眉間に皺を寄せた。
巻き込んだとかそういう事を考えているのだろう。
気にしないでなんて言えない。
緋村さんが護りたい人たちの中に私も含まれていることを知っているから。
そのことが嬉しい反面、心苦しい。
緋村さんの負担にならないように、自分で自分を護れるくらい、緋村さんと対等な立場にいたい。

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