第3章 決断
どうやら斎藤さんの話によると、半年に一度志々雄は新月村に一週間ほど逗留するらしい。
目的は斎藤さんにもわからないようだが、その目的のためだけに、志々雄の直属の配下の人が村を統括しているらしい。
そして今ちょうど、志々雄真実がその村に逗留していると先ほど新月村に送り込んだ斎藤さんの部下から連絡があったという。
「志々雄真実がどんな新時代を造るか、その目に焼き付けるといい」
これからどんな光景が目の前に広がるのか、怖くなった。
思い出すのは大久保さんのこと。
簡単に人の命を奪うような連中がこれからの日本を築き上げると考えただけで、未来が怖くなる。
だからそれを食い止めようと動く人たちがいる。
私も食い止める立場にいる。
これからの日本の未来の為に。
私の両親や祖父母、友人たちが倖せに暮らせる日本を築きあげるために。
「あの、一つ聞いてもいいですか」
「なんだ」
「斎藤さんの部下、の方ってどんな方なんですか?」
「三島栄一郎のことか」
三島さんと言うのか。
三島さんは元々新月村の出身で、怪しまれずに入れるだろうと送り込んだと斎藤さんは言う。
その口ぶりはいつもの尖った口ぶりではなく、どこか信頼しているようなそんな感じがした。
どのくらい馬車に乗っていただろう。
新月村の入り口手前で馬車は停車する。
ここで三島さんと落ち合うはずらしいのだが、姿が見当たらない。
待っている時間がもったいないと言わんばかりに斎藤さんはさっさと新月村へと向かう。
確かに今志々雄真実がいるのなら早く向かった方がいい。
私も斎藤さんの背中を追った。