第3章 決断
ゆっくりと目を開けた。
頬が濡れているのに気が付いて頬を拭った。
そして自分の腕に巻かれている包帯を見て、初めて自分がいる場所を確認した。
見たことのある医薬品を見つけて、ここは恵さんの診療所なのだと確信した。
布団から身体を起こす。
脇腹が痛んだが無理やり起き上がった。
窓からこぼれるオレンジの光を見て、先ほど見ていた夢を思い出す。
緋村さんは行ってしまった。
これでよかったと思う反面、本当にこれでよかったのかと思う自分もいる。
志々雄真実を倒すためなのだから仕方がない。
大切なものを護るために行かなければならない。
そんなことは重々理解していた。
だけど、こんなにも寂しくて苦しくて切ないのはなぜだろうか。
あの日の夜に見た光景がそうさせているのだとしたら、自分はなんて子供なんだろう。
「目が覚めたのね」
声のする方を向くと、そこには恵さんが替えの包帯を持って立っていた。
「丸々二日寝ていたのよ、あなた」
「そう、ですか」
そんなに私を気を失っていたのか。
いつもそうだ。
大事な場面で自分はいつも役に立たない。
なんのために体術や短剣術を習ってきたのかわからない。
自分の不甲斐なさに腹が立って、拳を握りしめた。
そんな私の葛藤を知ってか知らずか恵さんは私に言った。
「で、あなたはどうするつもりなの?」
何のことを聞いているのかは分かった。
緋村さんを追いかけるか追いかけないか、そういったところだろう。
きっと左之助さんや薫さん、弥彦くんたちは彼を追いかけて京都に行っただろう。
私は……?
私は追いかけるべきなのだろうか。
こんな足手まといな自分は……。
「わ、からないんです」
気付いたらそう言葉にしていた。