第3章 決断
夢を見た。
真っ白い世界。
どこからか光が差し込んでいて眩しくて目を細める。
たまに「これは夢だ」とわかる時がある。
きっとこれも夢だ。
眩しさに目が慣れてきた頃、ゆっくりと目を開ける。
すると目の前には緋村さんがいて、優しい瞳で私を見ていた。
緋村さん。
そう言ったはずなのに、音になっていない。
言いたいことがあったような気がするのに、何を言いたかったのか思い出せなくて、ただ二人見つめ合った。
しばらく見つめていると、緋村さんは手を伸ばして私の頭に触れた。
くしゃりと髪の毛を撫でるその手が愛おしくて、苦しくて、胸が軋んだ。
ゆっくりと離れる温もり。
背を向けて遠ざかって行く姿。
もう、二度と会えないようなそんな気がして一筋の涙が頬を伝った。