第32章 wolf(八代)
「お疲れさまでした。」
達成感がたまらない。
キャストもスタッフも多いこのイベントは会場も必然的に大きくなる。
ここはイベント会場近くのホテル。
開始時間が早かったイベントのお陰で、打ち上げも当日。
打ち上げも早く始まったはずなのに既にいい時間。
「そう言えば宏太朗くんがいないな。」
「帰ったのかな?」
この業界だと他の仕事の関係もあって、途中で抜けるなんて珍しい事ではない。
ボクはと言うと…
「森久保さんに勧められたら断る事なんて出来ないし。」
「いやぁ。飲み過ぎちゃったよね。」
酔いを冷ましにロビーを歩けば、遠くに見える見慣れた後ろ姿に声をかける。
「宏太朗くん?もう帰るの?」
ボクの声に反応して振り返る宏太朗くんの向こうに見えた顔に声を発してしまう。
「紗友ちゃん!!!」