第1章 my life (柿原)
バタン。
「ふー。スッキリした!」
濡れた髪を緑のバスタオルで無造作に拭く。
「早く服着ないと風邪引いちゃいますよ?」
視界の隅で、徹也さんの姿を確認する。
着やせする徹也さん。
鍛えてるとは言っても、服は比較的ゆとりのあるデザインを好んで着ている。
そのせいか不意打ちで現れた、筋肉質な上半身にドキッとする。
「何赤くなってんの?」
ニヤリと右の口角を引き上げ、私を後ろから抱きしめる。
色気をまとう笑みに胸が苦しくなる。
「なって無いです!」
「こんなに耳赤くさせて…やーらしぃ。」
フッと耳に息を吹きかけられて心臓がドクンと高鳴る。
「やらしーのは徹也さんです!!」
膝を曲げ、スルッと腕から抜け出る。
「おっと。チッ」
少し残念そうに舌打ちをする。
「コーヒー入れましたから飲んでください。」
リビングのローテーブルに挽き立てのコーヒーを置く。
「サンキュー。」
肩にバスタオルを掛け、コクッとコーヒーを飲む姿に再び見惚れる。
カップから、視線を外しこちらを窺う徹也さんと目が合う。
「そんなに見とれるなよ。照れるだろ?」
「見てないです!」
「本当に可愛くねー。」
その言葉に胸が苦しくなる。
「紗友は、本当に分かりやすい。」
「よし。今日は特別。髪を乾かしてもいーよ。」
「は?」
「早く~。風邪引いちゃうって言ったのは紗友だろぅ?」
今度は、猫撫で声で私を誘う。
「もぅ…」
そう言って、私は徹也さんからドライヤーを受け取り電源を入れた。