第29章 strawberry(梶)
「梶さん?どうかしました?」
「ん?」
呼ばれた声に我に返る。
「ぼーっとしてましたよ?」
「あはは。ごめんごめん。」
「ちょっと考え事。」
「お仕事ですか?」
「うぅん。懐かしい事をね。」
「ヒドいことしたなって今になって反省してるよ。」
「え?」
「でも、あの時の選択は間違ってなかったと思ってる。」
「?」
「割り込んで良かったって思ってる。」
「???」
キョトンとした表情でオレを見つめながら首をかしげる。
その顔を見てオレは自然と笑みがこぼれる。
「お待たせ致しました。」
お待ちかねのその声に紗友ちゃんは嬉しそう。
「じゃあ、行こうか。」
手をさしのべかけたけど、今はそれを許される関係じゃない。
それが、すごくもどかしいかな。