第28章 Halloween(神谷)
昔々、ある村にジャックという名の嘘つきでずる賢くて悪い事ばかりしていた男がいました。
ジャックはお酒が好きで、ハロウィーンの夜に酒場に入り浸り、とある悪魔と出会いました。
悪魔はジャックの魂を取ろうとしましたが、勿論ジャックは魂を取られたくはありません。
そこでジャックは悪魔に「魂をあげるから最期の酒を飲ませてくれ」と頼みました。
悪魔はその願いを聞き入れ、コインに化けて酒代を払おうとします。
しかし、ジャックは十字架でコインを抑えつけ財布に一緒にしまいこみ、閉じ込めてしまいます。
困った悪魔は、10年間ジャックの魂を取らないと約束します。
そして、ジャックが悪魔を解放すると悪魔はその場から消えました。
約束の期限が訪れた10年後…
悪魔は再びジャックの前に姿を現しました。
魂を取ろうとする悪魔に、ジャックは言いました。
「最期に、あの木になっている林檎が食べたい」
今度こそ最期だと思った悪魔は、林檎を取りに木に登ります。
するとジャックは、持っていたナイフで木の幹に十字架を刻み込みました。
十字架が苦手な悪魔は木から降りられなくなってしまいます。
そして『二度と魂を取らない』という条件で、ジャックは悪魔を木から降ろすと悪魔はすぐにその場から消えました。
時が経ち、ジャックは寿命でこの世を去りました。
導かれるまま天国へ行くも、悪い事ばかりしていたジャックは天国には入れてもらえません。
仕方なく地獄へ行きますが、そこにあの悪魔が現れて言いました。
「お前の魂は二度と取らないと約束したから、地獄には連れて行けない」
天国にも行けず、地獄にも行けないジャックは困り果て、悪魔にどうしたらいいのか訊ねました。
悪魔は元にいた場所に戻れと言いました。
しかし生き返れるはずも無く、現世に戻れるはずもありません。
行き場がないので、ジャックは来た道を引き返そうとしましたが…
道は暗く、冷たい闇が広がるばかり。
ジャックは悪魔に灯りをくれと懇願し、悪魔は地獄の炎の小さな塊を分けてくれました。
この灯りは消えせないと思ったジャックは、道端に転がっていたカブをくり抜きその中に火の塊を入れ、ランタンの代わりにしました。
ジャックはこのランタンを手に、地獄へも天国へも行く事ができず安息の地を求めて今でも煉獄を永遠に彷徨い続けているのです。