第27章 sound(櫻井)
「ブラックコーヒー頼んだのに、砂糖とミルクどうしますか?って言うんだもん。」
「もー!それ言わないで下さいよ!」
眉を寄せて口を尖らせる。
「あはは。ごめんごめん。」
「だって、可愛くてさ。」
「でもさ。あの時紗友が覚えてなくて寂しかったんだよ。」
「だから少し意地悪したんだよな。」
肩を抱いて、髪を撫でて頬に口付ける。
「…だって櫻井さん、迫力あって近づけなかったし。」
「つい人見知り発揮しちゃってね…」
「でもさ。話さなくても、俺は覚えてたのに?」
「……ごめんなさい。」
ガタガタと揺れる窓。
「雨が強くなってきたね。」
雨は勢いを増し、もう雨粒は見て取れない。
「窓がキレイになっちゃうね。」
その時、窓の外に稲積が走った。
「雷!」
体を離し、窓を見つめる紗友。
少しすれば聞こえる雷の音。
怖がって俺の胸に飛び込んで来ればいいのに。
台本をテーブルに置き、期待を込めて両手を広げる。
「近くじゃないといいですね。」
クルッとこちらに顔を向ける。
「何やってるんですか?」
「ん?」