第19章 Christmas Eve(梶)
紗友ちゃんの隣に座り、震える手をそっと握る。
「前から薄々は気付いてたの。」
「会う約束をしても何か理由を付けて断られる。」
「電話をしても出てくれない。」
「メールをしても返信は無し。」
「梶くん…その事実に目を背けたのは私なんだ。」
「今思えば、すでに終わってたの……よね。」
相変わらず目は腫れてるものの涙は流れていない。
宙を泳ぐ視線は、焦点が定まっていない。
「紗友ちゃん。よく話してくれたね。」
「………」
「話せるって事は、ちゃんと向き合えたんだよ。」
「苦しかったよね。」
「寂しかったよね。」
「梶くん…あんまり優しい事…しない…で」
「また泣いちゃ…」
「うっうっうっ…」
「梶くっ」
「泣いたらいいよ。気が済むまで泣いたらいい。」
姿勢を変えて、紗友ちゃんの背中を撫でる。
「梶くん…ありがとう…」
その後、紗友ちゃんは声を殺して泣き続けた。
俺の腕の中で疲れて眠るまで。