第19章 Christmas Eve(梶)
今日はクリスマスイブ。
「もしもし?拓真?」
「え?仕事?今夜は一緒に過ごせるって言ったよね?」
「は?何でよ!」
「終わってからでも良い!待ってる!」
「何時になるか分からない!?」
「会えないの?」
「ちょっ…」
ツーツーツーツー。
「何でよ…クリスマスイブなのに…」
外を歩けばイルミネーションに彩られた街並みに呑み込まれそう。
周りの人たちが全員幸せそうに見える。
私だけが……不幸せな気分。
タンブラーに入ったコーヒーを飲む。
「ぬるくなっちゃったな…。」
人が溢れる駅前。
その中に拓真の姿を見つけた。
仕事だって言ってたのに。
隣には私とは正反対な女の子。
カノジョを見つめる拓真の視線を私は知ってる。
私と拓真が出会ってすぐに…
私に向けてくれていた視線だもの。
二人に近づくと、私に気付いた拓真のあわてふためく姿。
あぁ。
やっぱり私は一人なんだ。
手に持ったタンブラーの蓋を開け、中に入ったコーヒーを力任せに拓真にぶちまけた。