第18章 dish(増田)
「「いただきます」」
真ん中に置かれたカゴには、白い布が敷かれその上には香ばしい香りを放つフランスパン。
目の前には、クリームシチュー。
付け合わせにキノコのマリネ。
そして、辛口の白ワイン。
「お。カボチャ入ってる。」
「好きかな?って思って入れてみた。」
「うん。美味しい。」
「良かった。」
「でもさ。クリームシチューにカボチャってなかなか入れないよね?」
「えっと…何年か前の仕事でグラタンにカボチャ入れるって言ってたような気がして…」
「ん?………あぁ!そう言えばそんなことも。」
「ふーん。覚えててくれたんだ~。」
シチューをすくったスプーンを見つめる。
「あ。もも肉。」
「うん。むね肉より、もも肉の方が好きでしょ?」
「あぁ。もも肉ってテンション上がる。」
「もちろん紗友のは、胸も太腿も好きだけど?」
「何言ってるのっ!」
俺は笑い、グラスに口を付けワインを飲む。
「へぇ。白ワインって、クリームシチューに合うんだ。」
ワインを見つめると、グラス越しに美味しそうにパンを頬張る姿に微笑んでしまう。
「俊樹くん?何笑ってるの?」
「思い出し笑い?」
「うん。ちょっとね。」
はぐらかせば、不服そうに目を細めて口を尖らせる。
「怒らない怒らない。」
「可愛い顔が台無し。」
クスッと笑うと困ったようにマリネを口へ運ぶ。
見てるだけで楽しいよ。
こうして、帰れば紗友の手料理を食べられる。
幸せだと思うんだ。