第18章 dish(増田)
「完璧にセッティングして俊樹くんのお出迎えをしたかったの…」
「いつもより早いんだもん。」
観念して、白状すれば私の頬にそっと触れる。
「早く帰ってきて欲しくなかった?」
悲しそうに眉を寄せて、私を見つめる瞳。
「会いたくなかった?」
無言の空気の中、頬を撫でる感触に意識が集中する。
「違っ」
「本当に?」
普段なら恥ずかしくて言えないけど、今なら素直になれる。
「うん。一分一秒でも早く俊樹くんに会いたかった。」
俊樹くんを見上げてそっと腕に触れる。
「うん。………知ってた。」
「………はい?」
「だ・か・ら」
「紗友が俺に会いたかったのは知ってた。」
さっきまでの弱々しい目つきとは打って変わって、今度は得意気な視線。
「ちょっと待って…」
「私、遊ばれてる?」
ようやく自分の置かれた立場を認識する。
睨めば、怪しく微笑む俊樹くん。
「遊んでないよ。コミュニケーション。」
「言葉の駆け引き。予想を上回る回答に気分が良いね。」
「もう知らない!」
得意気にフフンと鼻を鳴らす姿に私は背を向けた。