第14章 short(達央)
友人の働くサロンに駆け込む。
「あれ?今日予約してた?」
キョトンとした顔で、待合室のソファーに掛ける私に近づく。
「酷い顔…(笑)」
「うっ……。だって……。」
「振られたの?大好きな彼に。」
ニヤニヤしながら、私の表情を窺う。
「振られてない!」
「ムキになっちゃって。」
「で?何?」
「髪を切ろうと思うの。」
「何で急に?」
「暑いから。」
「あのな?暑いのは今に始まった事じゃないよな?」
「何かあったんだろ?」
「………。」
「俺もさ。この後、次の予約入ってるから暇じゃないんだよね?」
「うっ…すみません。」
「で?どうするの?」
「切る。」
「彼に対する当てつけで?」
「………。」
「スタイルを変えるのに、そんな理由で俺は出来ないな。」
「出直してきなよ。」
「日曜の18時に予約入れとくから。」
「さぁ。帰った帰った。」
私は追い立てられるように出口に追いやられた。
「ありがとうございました~。」
受付のスタッフさんが、苦笑いしながら手を振ってくれた。
「また来ますね…」
私の幼馴染み。
口は悪いけど、私のことをよく知ってる人。
髪は、いつもカレにお願いしている。
『彼に対する当てつけ』
そんなこと無いけど…
でも…
どうなんだろう。