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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第13章 合宿最終日―練習試合―


それと同時に、彼女と親しそうな東峰に対して、嫉妬にも似た感情を夜久は抱いていた。

それはもしかしたら、黒崎のことだけが要因ではなかったかもしれない。
同じ『バレー』という土俵に立ち、因縁のライバル(らしい)相手で、スパイカーとリベロという表と裏の関係。

東峰同様、夜久の中でも『東峰旭』という存在はライバルに近しい存在になりつつあった。

「おーし、そろそろ試合始めるぞー」

烏養の声に、両部員達はそれぞれの位置へと動き始めた。
東峰から嬉しそうにタオルとボトルを受け取る黒崎を横目で見ながら、夜久はボトルに残ったドリンクを一気に飲み干した。

―次も、負けない。
言葉には出さずに、夜久は闘志を秘めた視線だけ東峰に向け少し冷えてきた体を温めなおす。
その場で軽くジャンプをして、体をほぐす。

ネット越しにチラリと見やった夜久の目に、静かに燃えているものが東峰は見えたような気がした。
―次こそは、負けない。

ネットを挟んで、再び両校それぞれのプライドをかけた試合が始まった。
2試合目、3試合目と試合は続けられたが、1試合目と変わらず勝ったのは音駒だった。
どの試合も惜しいところまで烏野もいくのだが、あと一歩のところで音駒に逃げ切られてしまった。

試合終了後、片づけをしながら部員達はそれぞれ交流を図っていた。
田中と山本はマネージャーの清水のことで絆を深めていたし、日向と犬岡は2人にしか通じない言葉で盛り上がっていた。
東峰は相変わらずその容姿のせいで、音駒の1年生リベロの芝山に怖がられてしまっていた。

「旭、1年怖がらせてんなよ」

「えっ、いや、そんなつもりは……」

菅原が東峰と芝山の間に割って入り、芝山を守るように仁王立ちになる。
そんな3人の様子に苦笑しながら夜久がその輪の中に入ってきた。

「ふはっ、芝山。別にその人お前を取って食うわけじゃねぇから。単に手伝おうとしてただけっぽいぞ?」

「えっ!そうだったんですか!すみません!!」

夜久に言われて芝山は東峰の真意を理解したようだったが、それでもその容姿に慣れないのか、深く頭を下げて顔を見ようとはしなかった。

「こっちこそなんかごめんな。こいつ顔怖いだろ」

「あっ、はい。あ、いいえ!!」

「どっちだよ芝山」
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