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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第13章 合宿最終日―練習試合―


日向の変化に、他の部員達もそれぞれ感化されているようだった。
みなで日向の成長をフォローする部員達の姿に、黒崎は素直に感動していた。
反面、どうしようもない寂しさも感じていた。
黒崎がいくら望もうとも、彼らと同じようにコートに立って戦うことはできない。
選手ではない自分は、あの白い枠の中で熱い空気に身を投じることはできないのだ。

それでも、彼らのそばで何か出来ることがあるのなら。
自分に出来ることが少しでもあるのなら。
それに全力で取り組もう。
黒崎は団結する烏野メンバーを見つめながら、決意を新たにしていた。

試合は2セット目へとうつり、点を取っては取られの繰り返しだった。
西谷があげたアンダーのボールを東峰が相手コートに叩き込んだ。
始めはその威力に手を焼いていたようだったが、ボールの真正面に回り込んだ夜久が見事なレシーブを見せた。

綺麗にセッターへと上がったボールを見て、西谷と東峰は夜久の能力の高さを垣間見た気がした。
西谷は純粋に夜久の力を称賛していたが、東峰は自分のスパイクを綺麗に拾われたことに、少し苛立ちを覚えていた。

1か月、部活をサボっていた。
だから多少体がなまっているのは否めない。
それでも、二重の意味で『ライバル』である夜久にああ易々とスパイクを受け止められてしまうのは、東峰の中の小さなプライドが許さなかった。

対して、東峰のスパイクを受けた夜久はそのボールの重さに感銘を受けていた。
東峰の見た目からして高校生らしからぬ雰囲気は感じていたが、彼の放つ重たいスパイクはまさに社会人と言ってもおかしくなかった。

けれど。
どんなボールだとしても、音駒のリベロとして落とすわけにはいかなかった。
ビリリと腕に痺れを感じながらも、弧を描いて軽やかにセッターの元へ旅立っていくボールを、夜久は満足そうに見送った。

ボールを見送った先に、ネット越しに見えた烏野のエースの顔。
舌打ちの音が聞こえてきそうなその険しい顔に、夜久は優越感を感じていた。

攻撃は出来ずとも、自分がボールを拾うことで相手の志気を削ぐことは出来る。
それがいずれ、チームの瓦解を招く可能性もある。

自身の力で大きな相手を挫いたことに、夜久はぞくりと快感を覚えた。
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