第11章 合宿3日目
「俺も悪かった。武田先生が急用で出かけたこと分かってたのにそっちまで気ぃ回せなくて」
烏養コーチが頭を搔きながらそう言った。
「と、いう訳で、だ。2、3人手伝いに行ってくれるか」
コーチの言葉に、部員達は顔を見合わせる。
誰だって少しでも練習を続けたいだろう、自ら手をあげる人などいるのだろうか。
「俺、いきます」
真っ先に手をあげてくれたのは、旭先輩だった。
少し罰の悪そうな顔をしながらも、旭先輩は名乗りを上げてくれた。
その後、菅原先輩と縁下先輩も加わってくれることになり、4人で食事の準備を始めた。
「俺達、何したらいい?」
菅原先輩が三角巾を身に着けながら、こちらを向く。
男の人にこんなことを言うのは失礼かもしれないけれど、エプロンと三角巾を身に着けた菅原先輩はどことなく「おかん」の雰囲気を醸し出していた。
「えっと、カレーの具材を炒めるのと、サラダ用のゆでたまごを作るのと、サラダ作り、ですかね」
「おっし!じゃあ俺カレーやるわ。旭と縁下はサラダなー。美咲ちゃんは俺達のフォローしてくれる?何やったらいいかとか指示してくれると助かる」
菅原先輩がテキパキと役割分担を指示して、私達はそれに従ってそれぞれの役割をこなす。
やっぱりこういうところはさすが先輩だなぁと思う。
「分かりました。じゃあ、旭先輩はお鍋に卵16個いれて、卵がみんな浸かるくらいお水いれて火にかけてもらえますか。沸騰したらそのまま10分くらい吹きこぼれない様に火加減調整してください。縁下先輩はサラダ用の野菜準備してあるので洗ってもらっていいですか?レタスはちぎって、あとのは食べやすい大きさに切ってもらえると助かります!」
「おう、分かった」
先輩達に作業をお願いして、私はドレッシングを作りにかかる。時々また先輩達に指示を出しながら、ボウルの中身を混ぜる手は止めない。
「器用だなぁ、黒崎」
旭先輩が感心したように言う。
「え、そうですか?」
「うん、俺達にあれこれ指示しながら、でもきっちり手動かしててすごい…。料理だって並行してあれこれやるんだよね。俺だったら1つずつしかやれなさそう」