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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第11章 合宿3日目


初めて見た、あのスパイク。
大好きな旭先輩の、勇姿。

スローモーションで映像は流れて、重い音が響いた時には、ボールは勢いよく床を飛び立ち遥か後方へ消えていった。

ホイッスルを鳴らして、試合終了を告げる。
ようやくついた勝負にホッと胸をなでおろす。
見ているだけでも疲れる試合だった。
ほんとに皆よくあんなに飛んだり跳ねたりするなぁ…。

「黒崎、ありがとな。助かったよ」

タオルを受け取りながら爽やかに笑う澤村先輩に、いえ、と短く答える。
どこからかぐるぐるとお腹が鳴る音がした。


「あー…腹減った…」

田中先輩のその一言に、壁にかかった時計に目をやった。
そろそろ夕飯の準備をしないといけない時間だ。

「すみません、私そろそろ夕飯の準備しないといけないので」

「おう、そっか。よろしく頼むな。…1人でいけるか?」

「あ、武田先生もいるので大丈夫だと思います。今日はカレーだし」

「うおおお、カレー!!!めっちゃテンションあがる!!」

しおしおになっていた田中先輩が復活した。
現金な先輩の姿に、少し元気を分けてもらった。
体育館を後にして、調理室へ向かう途中、焦った顔の武田先生と出会った。

「黒崎さん!今から夕飯の準備ですよね?」

「はい」

「悪いんだけど、急用が出来てしまって!今から学校外に出ないと行けないんです。今日は清水さんも休んでるし、人手足りないよね?大丈夫かな?」

「あー…、大丈夫です。澤村先輩達に相談してみます」

「ほんとごめんね!!何か埋め合わせします!!」

言いながら武田先生は早歩きで行ってしまった。
さっき澤村先輩に先生がいるから大丈夫だと言ってしまったのに…なんて間が悪いんだろう。

「カレーだし1人でもいけるかなぁ…うーんでも一応先輩に相談しようかな…」

そう思い、元来た道を引き返して再び体育館へ向かった。
開け放たれた扉から、シューズの音と部員達の声が聞こえてくる。
練習の邪魔にならないようにそっと中の様子を窺う。
皆真剣な面持ちで、練習に打ち込んでいる。

声をかけようにも皆1分でも1秒でも無駄にしたくないかのように動き回っているのを見て、ためらってしまう。

「……うん、いいや。カレーなら1人でもいけるでしょう」
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