第11章 合宿3日目
部屋まで肩を貸そうとしたけれど、それは断られてしまった。それよりも先にドリンク持って行ってあげて?と言われてしまった。
そういえば山口君が呼びに来ていたんだっけ…。
急ぎドリンクを準備して、放置してきてしまった気まずさから、おそるおそる体育館へ向かった。
「お待たせしました!」
言って体育館に足を踏み入れると、わっと部員達が寄ってくる。
全員分のボトルを抱えていたから、前が良く見えていなかったけれど、きっとすごい勢いだったと思う。
「ふー!死ぬかと思ったぜ!」
「生き返るー」
部員達は口々にそんなことを言ってドリンクを飲みほしていく。
ごちそうさん、の言葉とともに足元にドリンクボトルが並べられていく。
「黒崎、清水はどうした?」
潔子先輩がいまだ姿を見せないことに疑問を持った澤村先輩が、私にそう問う。
「そういや朝食の後、見かけないッスね?」
田中先輩と西谷先輩も不思議そうな顔で私の返答を待っている。
「あ、その、ちょっと体調がすぐれないみたいで。今、部屋で休んでます」
「清水、大丈夫なのか?」
「軽い貧血みたいで…横になってたら大丈夫、だと言ってました」
まさか馬鹿正直に『生理痛』だなんて説明はできない。
けれど重い病気というわけでもない為、それとなく説明をする。
「そうか…。清水がいない分仕事が増えるな……お前なら大丈夫だとは思うが…。俺達もフォローするから、何かあったら遠慮なく言ってくれな」
「はい」
後ろで田中先輩と西谷先輩が潔子先輩のことでぎゃあぎゃあと何事か叫んでいたが、澤村先輩と菅原先輩に一喝されて大人しくなった。
体育館を後にして、黙々とマネージャー業をこなす。
潔子先輩には悪いけれど、1人で仕事をすることになって少し助かったと思った。
忙しさの中にいれば、昨日のことを思い出す時間も少なくて済むから。
今日は朝食の際に朝の挨拶を交わしたくらいで、ほとんど旭先輩と会話をしていない。
向こうも昨日の事で気まずいのか、ほとんど話しかけてくることもなかった。
少しさみしくも思ったけれど、やっぱりどんな顔で接したらいいのか分からないから、それでよかったのかもしれない、とも思う。