第11章 合宿3日目
バレー部員達の前では必死に痛みを隠していたようだったが、朝食の片付けで2人きりになった途端、潔子先輩はまた痛みに顔を歪めた。
痛み止めの薬を飲んだものの、薬が効くまでしばらくかかるだろう。
私は片づけをやろうとする潔子先輩をなんとか椅子に座らせて、一人で片づけを済ませた。
「ごめんね、片づけ任せちゃって」
「何言ってるんですか。しんどい時はどんどん頼ってください!」
「ふふ、ありがとう。頼もしいな」
潔子先輩にそう言われると、俄然やる気が出る。
田中先輩と西谷先輩の気持ちもちょっと分かる気がする。
「じゃあ私洗濯行ってきますね!」
「うん、よろしく」
潔子先輩は少しの間調理室で休憩をとってから、マネージャーの仕事にかかることにしたので、私は1人で洗濯場へと向かった。
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「あっ、いたいた!黒崎さん!」
洗濯機を何度か回したところで、山口君に呼びかけられた。
山口君のその慌てぶりに、何事かと彼の方へ向き直る。
「どうしたの?山口君」
「ドリンクの粉末ってどこにある?いつものとこに無くて」
「え?潔子先輩が準備してるはずだけど…」
「清水先輩、まだ体育館に顔出してないよ」
「っ!!」
潔子先輩、やっぱりしんどいんじゃないか。
薬を飲めば平気って言ってたけど、まだ調理室で休んでるのかな。
心配になって、山口君が私を呼びに来たことも忘れて調理室へと駆け出した。
「え?!ちょっと待って、黒崎さん、どこ行くのー?!?」
後ろから山口君の声が聞こえたけれど、それに答える余裕も無く、心の中でごめん!と謝罪する。
調理室に入ると、潔子先輩が机にうつぶせになっていた。
苦しそうに顔を歪めているのが目に入って、そっと近づく。
「潔子先輩、大丈夫ですか?」
「……ごめん、すぐ行こうと思ったんだけど」
「こっちは気にしなくていいですから…。部屋で休んだらどうですか?ここで休むより横になってた方が楽じゃないですか?」
「……うん、そうする。仕事任せていいかな。ごめんね。分からないことがあったら、澤村とか、聞いてみて」
ゆっくり立ち上がると、潔子先輩はおぼつかない足取りで寝泊まりしている部屋へと向かって行った。