第9章 GW合宿 2日目 東峰side
今まで付き合ってきた女の子達だって、俺の事を知れば知るほど、俺に幻滅するばかりだった。
黒崎も、もっと俺の事を知ったら。
『思っていたのと違った』なんて言って、俺から離れて行くのではないだろうか。
黒崎が離れて行ってしまうのは、ちょっと、寂しい。
そこまで考えて、もしかしたら自分も彼女のことを好きになりかけているのかもしれない、とハッとする。
「旭」
大地の呼びかけに、びくりとする。
俺の反応に大地は少し不快そうに眉根を寄せながらも言葉を続けた。
「ちょっと黒崎の様子見てきてくれないか?」
「え?黒崎の?」
「何で俺が、って顔だな。いや、実はさっき廊下ですれ違ったんだが、ちょっと様子が変だったからさ。俺よりお前の方があいつも話しやすいかな、と思って。お前ら普段よく話すだろ?」
「よく話はするけど…こういう時は、清水の方が適任じゃないか?同じ女子同士だし」
何も間違ったことは言っていないと思う。
なのに、何故か俺を見る大地の目は冷たい。
大地は俺に対して遠慮なしに辛辣な言動をしてくるが、それにしたって目の前の大地の視線は冷ややか過ぎる。
「あー、ほら、同性だと逆に話しにくいこともあんじゃん?」
大地の後ろからひょっこり顔を出したスガが口を挟む。
スガの言葉に、大地がうんうんと頷く。
「…それに清水がお前に頼む、と言ってきたんだぞ」
「清水が?そうなのか……?」
「潔子さんに頼みごとされるなんて羨ましすぎるッス!!」
「田中めんどくさくなるからちょっと黙れ」
スガに押さえつけられた田中がもごもごと何かを言っている。
田中を押さえつけたままスガが叫ぶ。
「もーとにかく様子見に行って来いって!あの元気印の美咲ちゃんが様子おかしいって、よっぽどだろ。かわいい後輩が心配じゃないのかよ、旭!」
「わ、分かったよ、行ってくるよ」
皆に見送られて、部屋を出る。
大地の話によるとロビーの方へ向かっていたらしいので、とりあえずロビーへ向かうことにした。
「…はぁ、難しいなこういうの。本人に気付かれずに手を貸すってのは」
「いや大地にしてはよくやった方だよ」
部屋で大地とスガがそんな風に会話しながら、俺の背中を見送っていることを、俺は全く気が付いていなかった。