第9章 GW合宿 2日目 東峰side
『…男子バレー部マネージャーの、黒崎さん、黒崎美咲さん。ご自宅からお電話が入っています。至急、ロビーまで来てください。繰り返します…』
「…美咲ちゃん?何かあったんスかね」
田中と西谷が揃って俺を見る。
そんな風に聞かれても、俺が何か知る由もないんだけれど。
「さぁ……?大した事ないといいけどなぁ」
「そうッスね。もし家に帰る、とかなったら旭さん寂しいッスよね」
「えっ?なんで?」
田中の質問に、疑問符でいっぱいになる。
そりゃあ黒崎はむさくるしい男達の中で、癒しの存在ではあるけれど、俺が寂しいって、どういうことだろう??
「??…旭さん、美咲ちゃんと付き合ってんじゃないんスか?」
「はぁ?!どこからそういうことになるの??!つ、付き合ってないよ俺達…」
「マジっすか?!いや、俺てっきり2人は付き合ってるもんだと」
「俺もッス」
田中と西谷はさも当然のように答えた。
確かに黒崎とは他の部員よりよく話す方だと思うし、仲は良いと思うけれど。
付き合うとか、そういう風に思った事が無かったから、傍からそういう風に見られていたことに驚いた。
「美咲ちゃんが部活見学に来た時から仲良い感じだったじゃないッスか」
黒崎と初めて会った日。
ボールをぶつけてしまって何度も謝り倒した。
それに彼女は笑って「大丈夫」だと答えて。
そういえば、初対面で怖がられなかったのは、なかなか貴重な体験だった。
あの日から、黒崎に何故か懐かれてしまって、事あるごとによく話をするようになった。
彼女はいつも明るく笑って、俺の話はなんでも興味深そうに聞いてくれる。
そんなこと今まであんまり経験なくて、嬉しくなって調子に乗ってべらべら話してしまうことが多々あった。
それでも彼女は嫌がることもなく、むしろもっと話を聞きたいと目を輝かせてくれるのだ。
黒崎は、俺のことを好きなのかもしれない。
けど……、俺は、こんな俺を好きになってくれる子がいるなんてどこか自信が持てなくて、自分の思い込みなのではないかとその考えを封印している。