第1章 一枚のビラ
「そう。やっと見つけたマネージャー候補の子。初っ端からアクシデントに見舞われるなんて可哀想」
「ウェッ?!いや、本当に悪かったと思ってるよ?!ご、ごめん・・・えっと、黒崎さん?」
こんなに体の大きな男の人が、こんなにペコペコ謝るところ見たこと無い。
見た目とのアンバランスさが可笑しくなって、自然と笑みがこぼれた。
「そんなに謝らないでください。別に故意でやったわけじゃないんですし。それに、こうやって手当てまでしてくれたじゃないですか。」
「・・・黒崎さん、優しいね」
うっ、と泣きそうな声で巨人さんが言う。
私が特段優しい訳じゃない。
彼が特別、気にしいで弱腰なのだ。
「旭さーん!今日も俺と・・・って、その子は?」
「おう、西谷。新しいマネージャーの子だって」
「マネージャー候補、ね」
巨人さん、もとい旭先輩の言葉を清水先輩が即座に訂正する。
無理強いはしたくない、という清水先輩の優しさからだろう。
旭さん!と駆け寄ってきた小柄な人、西谷さんはまじまじと私を見つめてきた。
それを清水先輩がたしなめると、何故か西谷さんは嬉しそうに頬を赤らめていた。
「清水、その子」
「マネージャー候補の黒崎さん」
風格のある男子部員が体育館に入ってくるなり清水先輩と私の元へやってきた。
どうもバレー部のキャプテンのようだ。
確かにどことなく頼れる人オーラが漂っている。
「あれ、黒崎さん腕どうしたの?」
「お、俺がボールぶつけちゃって」
私が答えるよりも早く、旭先輩が澤村先輩に答えた。
正直助かった。
旭先輩を目の前にして『ボールがぶつかった』と言うのは少し心苦しかったから。
また旭先輩に変な気遣いをさせるのも可哀想だし申し訳ない。
「はぁ?ひげちょこ、しっかりやれよ。大事なマネージャー候補にボールぶつけるってどういうことだよ」
「すまん」
「俺じゃなくて黒崎さんに謝れ」
澤村先輩に言われて、旭先輩がまた謝罪しようとしたのでそれを制した。もう充分すぎるほど謝ってもらった。これ以上はこちらが申し訳なく居たたまれなくなる。
「澤村先輩、もう充分謝ってもらいましたから。それに、旭先輩は悪くないんです。私がぼうっと突っ立ってたのが悪いから・・・」