第47章 不確かなものだから
見せたいところってどこだろう。
旭さんに尋ねてみても、ついてからのお楽しみだとしか答えてくれない。
途切れることのない人ごみの中を二人、手をつないで歩く。
いつまでもこんな時間が続けばいいなと思った。
ドラマみたいに何か劇的なことなんて起きなくていい。
ただこうやって、旭さんと手をつないで隣を歩く。
時々顔を見合わせて笑って、その度に心臓がきゅっとなって。
心地よい胸の苦しさを「しあわせ」だと噛みしめる。
そういう穏やかな日常が続けばいい。
そんなことを考えながらしばらく歩いていると「瑞鳳殿」と書かれた大きな看板が見えてきた。
石の階段がずっと上まで続いている。階段の両脇には竹筒の灯篭がともされていて、幻想的な雰囲気が漂っていた。
階段を登り切った先はこうこうと明るく照らされている。うっそうと生い茂る木々がその明かりを受けて緑色に光って見える。
「足元暗いから気を付けて」
下駄の私を気遣って、旭さんは手をとって一段一段上がってくれる。
石段を行き来する人の数は多く、時折二人身を寄せて立ち止まったりした。
「ごめん、下駄で足疲れてない?」
「大丈夫です」
階段はゆうに百段はあった。
履きなれない下駄で上がるのはほんの少し大変だったけれど、隣で旭さんが手を引いてくれるからそこまで苦に感じなかった。
階段を登りきると「瑞鳳殿」と大きく書かれた看板が出迎えてくれた。
「ずいほうでん?」
「伊達政宗公を祀っているところだよ」
伊達政宗。日本史の教科書にも載っている武将だ。
三日月の形をした飾りのついた兜が印象的な。
そう思ったのと同時に、目の前を伊達政宗の恰好をした人が通り過ぎて行った。
他にも武将の恰好をした人が歩いていたから、お祭りに合わせてそういった催しもあるのかもしれない。
入場券を買って中に入ると、あちこちに竹筒の灯篭が置かれているのが目に入った。筒の中でゆらめくろうろくの明かりはぼんやりと見え、幻想的な雰囲気を醸し出している。
少し行くと色とりどり、形も様々な紙で出来た飾りがアーチ状に飾られていた。