第47章 不確かなものだから
道宮さんは旭さんも自分と同じようにバレー部のメンバーと来ているとでも考えているのか、周囲をきょろきょろと見まわした。
そのうち私の存在に気が付いて、ひどく驚いた顔になった。
「え、あっ、美咲ちゃん?!」
「こんばんは」
私が頭を下げると道宮さんもつられて頭を下げる。
そして私と旭さんを交互に見やっては目を瞬かせていた。
男子バレー部の中では周知の事実となってしまっていた私と旭さんの関係を、道宮さんはまだ知らなかったみたいだった。
「あぁ、そっかぁ、そうなんだぁ」
道宮さんの声はひどく嬉しそうだった。
なぜか耳まで真っ赤にさせて、にこっと素敵な笑みを浮かべた道宮さんは何度もおめでとうと口にする。
「良かったねぇ美咲ちゃん」
「ありがとうございます」
まるで自分の事のように喜んでくれる道宮さん。
GW合宿の時に互いに励まし合ったことを思い出す。ついこの間のことのようだ。
あれからもう3ヶ月近く経つ。
色んなことがあった。
目まぐるしく環境が変わってついていくのに精一杯で、いまだ旭さんと両想いになったのが現実じゃないみたいだったけれど。
道宮さんの反応を見ていると、今旭さんの隣にいるのは夢じゃなくて現実なのだという実感が強くなる。
「え、いつからなの? 二人付き合い出したの」
道宮さんの隣にいた、女子バレー部の相原さんがそう切り出すと旭さんが照れたように答えた。
「…5日前」
「マジで! 付き合いたてほやほやじゃん」
改めてそう言われると妙に気恥しい。
人の色恋というものは面白く思えるのだろうか、その後も告白はどちらからかとか、質問が絶えなかった。
けれど恥ずかしさから返答に困る私達を見て、道宮さんがそれを制してくれた。
「せっかくのデート邪魔しちゃ悪いから退散するよ。ごめんね東峰、美咲ちゃん。またね!」
道宮さんに背中を押されながらも、数人は後ろ髪引かれるようで私達をちらちらと振り返りながら去っていった。
別に隠すようなことじゃないし、人に言えないようなお付き合いはしていないけれど、根掘り葉掘り聞かれるのはやっぱり恥ずかしい。
自然とため息が出た。同時に旭さんもため息をついていて、お互い顔を見合わせて笑った。
「…美咲、時間まだ大丈夫? せっかくだから見せたいところがあるんだけど」
「大丈夫ですよ」