第47章 不確かなものだから
「そうだよ、絶対に迎えに来るよ」
頭上から降り注ぐ、旭さんの穏やかな声にりと君だけじゃなく私も救われた気分だった。
大丈夫、大丈夫だと語りかけてくれるようで私はまた、彼の優しさに甘えてしまう。
「ママが来るまで、一緒にいて」
涙交じりの声でそう言うりと君の願いを無下にできるはずもなく、私達はりと君と一緒に救護のテントにおさまった。
迷子を知らせる放送が流れてしばらくすると、小さな女の子を抱えた女性が血相をかえて飛び込んできた。
「りと!!」
「ママ!!」
りと君は旭さんの腕から飛び出して、迎えに来たお母さんに飛びついた。
無事でよかった、とこぼしたお母さんに抱きしめられて押しとどめていた不安が涙となり、一気に堰を切ったようにりと君の目から溢れだす。
ぎゅっとお母さんにしがみついて遠慮なしに涙をながすりと君の背中と、愛しそうにその背中を撫でるお母さんの姿を見ていたら、こらえていても涙が出てくる。
「よかった…よかったなぁ……」
声を震わせていたのは旭さんで、見上げた先の彼の目には今にも零れ落ちそうな涙の粒があった。
零れ落ちる前に手でぐしぐしと涙を拭い取ると、旭さんは私に目線を落としてにかっと笑った。
りと君とママはひとしきり私達にお礼を言ってテントを後にした。
私達もテントを出ようとしたところで、もうすぐ花火が上がるとのアナウンスが流れた。
「打ち上げ始まっちゃうね」
「そうですねぇ」
今更花火が見やすい場所を探したってどこも人でいっぱいだろう。
その代わり、打ち上げが迫っているからか屋台に並ぶ人数はまばらだった。
「今のうちに屋台回りませんか?」
「そうだね。花火1時間あるし…お腹、すいちゃったしね」
買い損ねた牛タンと、いくつかの軽食を買って空いてる場所を見つけた時には花火が始まってとうに30分以上過ぎていた。
夜空を彩る大輪の花は、見ている私達まで明るく照らす。
打ち上げ場所からはだいぶ離れているはずなのに、それでも空に花開く光の粒はこちらまで降り注いできそうなほど、明るく大きい。
「綺麗ですね」
「うん……綺麗だね」
そっと、旭さんの肩に頭を寄せる。
ほんの少し肩が震えたけれど、旭さんは何も言わずに肩を貸してくれた。