第47章 不確かなものだから
日曜に駅に迎えに行くのはやりすぎたかな。
今日だって朝から家の前で待ってるとか、ストーカーぽかったかな。いや付き合ってるんだから別にいいよな……?
いざ彼氏彼女になったら、どんな距離感をとったらいいのか分からなくなってきた。
自分から好きになった初めての相手だから余計にそう思うのだろうか。
ちょっとしたことでも嫌がられたくない、あきられたくないと思ってしまう。
黒崎と知り合ってまだ五ヶ月ちょっと。
お互い好きだと分かったといっても、まだまだ知らないこともある。
『ちゃんと言葉にしましょう』
つい先日そうやって約束したばかりじゃないか。
一人でうじうじ悩んでいても仕方ない。
深呼吸を二回して俺はようやく言いたかった言葉を口にした。
「あのさ、黒崎。今日花火大会があるんだけど、一緒に見に行かない?」
険しかった黒崎の顔が少し緩んだ。
でもすぐに返事は無かった。
やっぱりすでに予定が入っていたのかもしれない。
「…先輩、疲れません? 部活の後ですし」
「別に大丈夫だよ」
良かった。予定があるわけじゃないみたいだ。
でも心なしか声音が沈んでるような気がする。
「それに二日後は試合ですし…それも春高の一次予選の」
「そうだけど……もしかして、あんまり気乗りしない? 花火苦手とか……?」
なんだかあれこれ理由をつけて断ろうとしている気がして、おそるおそる尋ねてみると、黒崎は大きく首を振った。
「いえ、違います! …めちゃくちゃ行きたいです。でも今はデートとかしてる時じゃないのかなって……大事な試合前だから」
「…俺は、黒崎が花火一緒に行ってくれた方が試合頑張れるんだけどな」
「ほんとですか?」
「うん。それに少しでも二人で一緒に過ごしたい。ダメ、かな…?」
黒崎の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
自分で言っていて恥ずかしくなってきた。
何朝っぱらから彼女に甘えてるんだろう、俺。
「ダメじゃないです。私もおんなじ気持ちです」
俯いていく黒崎の顔。
耳まで真っ赤になっているのを見て、口元がにやけていく。
ひとつひとつのことが愛しくてたまらない。
もし彼女が怒っても、きっとそれすら可愛く思えてしまえそうだ。
「じゃあ決まりな。今日の部活、俄然やる気が出てきた」
「ふふっ」