第45章 【過去編】 あの頃のぼくらは
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季節は巡って、夏になった。
夏休みの一日目の夜は、毎年、地域の夏祭りがある。
公民館の周辺に、出店がいくつも並ぶ。
俺と義明と美咲ちゃんの三人で小銭を握りしめて店を回った。
焼きそば、フランクフルト、りんごあめ。
目に入った順に、買い物をしていって、両手いっぱいになったところで、適当な場所を見つけて三人で分け合って食べた。
途中でりんごあめが串から落ちちゃって、最後の一口を楽しみにしてた美咲ちゃんが泣き出すハプニングはあったけれど、それも太っ腹な義明がもう一個りんごあめを買いに走って事なきを得た。
「いい兄ちゃんじゃん」
「こいつがピーピーうるせぇからだよ。泣き止ますには仕方ねぇだろ」
「そういうことにしとくか」
「…チッ…」
暗くてよく見えなかったけど、たぶん、この時の義明は照れていたんだと思う。
相変わらず言葉は悪かったけど、この時には義明の不器用な優しさが俺にも分かるようになっていた。
もっと上手に、素直に、気持ちを表現出来たら。
こいつは人に好かれるやつなのに、勿体ない。
でも義明の本当の姿を知っているのは俺だけってのも、なんか特別感があって嬉しかった。
一通り出店を見て回ると、放送がかかった。
盆踊りの時間らしい。
やぐらの周りにパラパラと人が集まりだし、俺達もその輪の中に入った。
しばらくしてスピーカーから音楽が流れだし、大人達が音に合わせて踊りだした。
見よう見まねで俺らも踊る。
次第に盆踊りに参加する人達が増えていき、あたりは老若男女入り乱れ、義明や美咲ちゃんと離れ離れになってしまった。
暗がりの中でお互いの姿を見つけるのは難しく、ようやく義明と落ち合えた時には、美咲ちゃんの姿が周囲に見当たらなかった。
地域の小さなお祭りとはいえ、人手は多い。
美咲ちゃんの名を呼んで必死に探せど、見つからなかった。
「どうしよう、衛輔。美咲が……」
義明の顔は真っ青だ。
俺も同じだと思う。