第7章 GW合宿 その2
「命短し恋せよ乙女、だね。…東峰といる時の美咲ちゃん、きらきらしててとっても可愛いんだよ。それ見てると羨ましい、って思える。私もそんな風にキラキラしてみたいな、って」
「潔子先輩はいつもキラキラしてますよぉ…」
むしろ潔子先輩みたいになりたいですよ、なんてぼやく。
そんな私に潔子先輩は社交辞令かもしれないけれど、「美咲ちゃんはとっても魅力的だよ」なんて言ってくれた。
隣の家の芝生は青い、ということだろうか。
潔子先輩は誰からも憧れられる存在だし、私になりたいだなんてこれっぽっちも思わないと思ってたけれど。
潔子先輩は潔子先輩なりに、自分にないものを欲しがっているんだろうか。
私にしかないものって、あるんだろうか。
それを武器にして、戦って行けるんだろうか。
「あ、そろそろ他の部の人達来るね。あがろうか」
「あっという間のお風呂でしたねぇ~」
「まぁ時間押しちゃったし、仕方ないね」
次の利用者が来る前に、急いで着替えを済ませて、浴場を後にする。
まだ濡れたままの髪が首筋に張り付いて気持ち悪い。
「部屋にドライヤーあるから、戻って乾かそうか」
潔子先輩と連れ立って、部屋へ戻ろうとした時だった。
床を派手に擦る音がして、驚いてその音のした方を見ると、床に平伏している田中先輩がいた。
この人は本当に、ブレない。
「うぉぉぉ・・・田中龍之介、今この瞬間ほど生きていて良かったと思うことはないッス!!風呂上がりの潔子さんを拝めるなんて・・・!!」
「・・・・・・」
潔子先輩は若干侮蔑の表情を浮かべて、田中先輩を一瞥した。
「美咲ちゃん、行こ」
潔子先輩は何も見なかったかのように、田中先輩の存在を無視して階段を登り始めた。
いまだ床に平伏したままの田中先輩を横目にしつつ、潔子先輩の後を追った。
背後からは田中先輩のむせび泣きがいつまでも聞こえていた。
合宿中、寝泊まりする部屋まで来ると、中から賑やかな声が聞こえてきた。
扉を開けると、にこやかに私たちを出迎えてくれる人達の姿があった。
彼女達は、女子バレー部の人達だ。
私達マネージャー2人は、女子バレー部の部屋を一緒に使わせてもらうことになっていた。
普段練習する体育館が違う為、あまり顔を合わせたことのない女子バレー部の人達にいささか緊張する。