第7章 GW合宿 その2
合宿1日目、怪我や大きなアクシデントも無く、無事終了。
夕飯の片づけも終えて、ようやくマネージャー業も一息ついたところだ。
「美咲ちゃん、お風呂いこう。他の部活の人達もいるし、あんまり時間ない」
「はーい」
潔子先輩が急かすのも無理はない。
このGW中に学校で合宿をするのはバレー部だけではないのだ。
食事の時間やお風呂の時間等、被らない様にあらかじめ調整してあるとはいえ、やはりなんだかんだと計画したようにはうまくいかないものだ。
いくらか片付けに時間がかかってしまったため、お風呂の時間が短くなってしまった。
部員たちほどの運動量はないとはいえ、さすがに1日動き回った疲れをとるには、やはりゆっくりと湯船につかるのが1番だ。
しかし髪を洗ったり、体を洗ったり、色々と女子のお風呂は時間がかかるもの。
元々30分しかないお風呂の時間がさらに短くなってしまったことは、残念だ。
手早く洗髪を済ませ、湯船に滑り込む。
お世辞にも広いとは言えない浴槽だったが、家のものと比べれば幾分か広いだろう。
隣の潔子先輩が珍しくぼうっとしている気がした。
先輩もお風呂くらいは気を抜くものなのかもしれない。
「…美咲ちゃん、東峰のことどう思う?」
唐突に投げかけられたその問いに、私は動揺を隠せなかった。
動揺は波を立てて湯面を揺らした。
「ふぇっ?!ど、どうって…?!?」
「異性として、意識してる?」
「ふぉっ?!」
「そっか。じゃあこれからも応援するね」
「いえ、私肯定も何もしていないんですが…」
「ふふ、ダメだよ。顔にかいてあるもの。『好き』って」
「ひゃー!!!マジですか?!顔に出ちゃってますか?!」
ばしゃばしゃと真っ赤になった顔を洗う。
洗ったところで顔の火照りは収まらないけれど、そうせずにはいられなかった。
「大丈夫。東峰はまだ気づいてないから。菅原は気付いてるみたいだけど」
「…やっぱり菅原先輩気づいてますよね…。昼食の時、嫌な笑顔してましたもん…」
「気付いてるけど、余計なことはしないと思うよ。見守ってるって感じかな」
昼食の時のいたずらっ子な笑みを浮かべた菅原先輩の顔を思い返す。
潔子先輩の言う『見守る』には程遠いような笑顔だったように思えるけれど…潔子先輩が言うからには、あれが菅原先輩の『見守る』笑顔なのかもしれない…。