第45章 【過去編】 あの頃のぼくらは
「義明!!」
ピンクやら紫色のランドセルを放り投げて、俺は義明の元へ駆け寄った。
義明は女の子相手でも容赦しなかった。
鼻血を流している子もいる。
また体育の時みたいに、義明は壊れた機械みたいに女の子を殴り続けていた。
「やめろ!!!」
なんとしてでも止めなきゃいけないと思った。
義明を後ろから羽交い絞めにして、とにかく引っ張った。
女の子から少しでも義明を引き離そうと、力をこめる。
「離せ!!」
「離すかよ! お前が暴力振るえば振るうほど、美咲ちゃんの立場が悪くなるって、分かんねぇのかよ?!」
「……っ!!」
「義明の気持ちは分かる! でも暴力振るったら負けだ!」
そう言い放つと、義明はあっけなく抵抗するのをやめて大人しくなった。
暴力はやんでも、痛みや恐怖で女の子達はわんわんと泣き続けている。
そのうちに騒ぎに気付いた近所の人が、家から飛び出してきた。
「何があったの?!」
事情を知らないおばさんは、泣きわめく女の子達の主張だけを聞き入れて、学校へ連絡を入れてしまった。
先生たちがくる間、おばさんはずっと義明に「どうしてこんな酷い事をするの」と問い詰めていた。
けれど、いくら義明が自分の妹が受けていたいじめの事を話そうとしても、おばさんはほとんど聞く耳を持ってくれなかった。
結局、義明の見た目と態度と、現に怪我をして泣いている女の子がいることで、理由はどうあれ義明が全面的に悪い事になってしまっていた。
しばらくして先生が来て、俺はまた事情を聞かれる羽目になった。
自分が見聞きしたことを、素直にそのまま話した。
でも途中、女の子達が「いじめじゃない」「ただ荷物持ちの遊びやってただけ」と口を挟んできて、そこでまた義明が暴れだした。
義明を抑えようとする先生に、義明は力いっぱい反抗していた。
先生の眼鏡にはヒビが入ったし、顔面にも何度か義明のパンチがヒットして、痛そうな顔をしていた。
その日の夜、義明の母さんが義明を連れて家に謝りに来た。
義明の母さんはすごく疲れた顔をしていて、げっそりとしていた。
──女の子の家に謝りに行っていたもので…夜久さんへの謝罪が遅くなって申し訳ありません。
前回もご迷惑をおかけしたというのに、本当に申し訳ありません。