• テキストサイズ

【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第45章 【過去編】 あの頃のぼくらは



俺は正直、関わり合いにはなりたくなかった。

だっていくらこっちが歩み寄ろうとしても、向こうはこれっぽっちも仲良くしようと思ってないんだ。
それどころか近づくものは皆敵だ、と言わんばかりの態度。

それなのに母さんときたら、何かと義明達を気にかけるように、なんて言ってくるものだから、この時の俺は学校に行くのも、家にいるのも億劫になっていた。


*************

義明達が引っ越してきてから、一ヶ月くらい経った頃。

いつものように気乗りしない登校班で登校している時だった。

俺の蹴った小石が、前を行く義明の足にぶつかってしまった。

「ごめん」
「……チッ……」

義明はちょっとだけ振り返って、舌打ちをした。
けれどそれ以上は何も言わず、すぐ前に向き直って、歩き出した。

少し歩いたところで、後ろから衝撃を受けた。

俺の後ろを歩いていた美咲ちゃんが転びかけて、俺のランドセルにしがみつこうとしたみたいだった。

そのはずみで、俺は前のめりになり、義明のランドセルにダイブしてしまった。

義明は急に後ろから押されて、そのまま転んでしまった。

「ってぇなぁ!!! お前、さっきからワザとだろ?!」

膝から血を流した義明が、すごい形相でつかみかかってきた。
すでに右手はグーの形になっていて、今にもパンチがとんできそうだった。

反射的に目をつぶる。
鈍い音がして、小さなうめき声が聞こえた。

うめき声は自分のものじゃないし、痛みも感じなかったから、不思議に思って目を開けると、俺の目の前に美咲ちゃんの頭があった。

「バカ美咲!! しゃしゃってくんじゃねぇよ!!」

妹にも容赦のない罵声を浴びせながらも、さすがに手を出すのはためらわれたのか、義明はそれ以上拳を振り上げることは無かった。

「美咲ちゃん、大丈夫?」
「…うん、だいじょうぶだよ」

にへら、と美咲ちゃんが笑う。

あ。まただ。
前も見た、あの変な笑顔。

痛いはずなのに、そうと言わない、嘘の笑顔。

「……なんで、笑うの。ホントは痛いんでしょ。なのに、なんで笑うの」

不気味というか、なんというか。
理解が出来なくて、気味が悪い感じがする。

笑ってるはずなのに、そう見えなくて、なんか変な感じがする。
/ 460ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp