第44章 久しぶりの団欒
衛輔に言われて、美咲はゆっくりと表紙をめくる。
表紙と写真のページの間に、1枚のページが挟まっている。
可愛らしいシールやステッカーでデコレーションされたそのページは、真由美が夜な夜な仕上げたものだった。
真由美と守からの温かいメッセージも書いてあり、美咲は思わず泣きそうになっていた。
また1ページめくると、そこからは衛輔と美咲達の学校行事や日常生活の写真が小さなコメント付きで綺麗に並べられていた。
「すごい……こんなに丁寧にアルバムにしてある……」
「母さん、夜中頑張って作ってたんだぜ」
「そうなんだ……真由美さんには感謝してもしきれないな……」
音信不通だった美咲を家に招いてくれただけではなく、こんな手の込んだアルバムを作ってくれていた真由美に、美咲は心の底から尊敬と感謝の念を抱いていた。
ページをめくるたびに、美咲の中にここで過ごした思い出が鮮明によみがえってくる。
「なつかしー! この運動会の時さ、途中で大雨になったの覚えてる?」
「うん、覚えてる。雨やんだから、続行になったよね」
「そうそう。それでぬかるんだ運動場走らされてさぁ」
「衛輔くんもお兄ちゃんも転んで泥だらけになってた」
「義明と同着一位だったんだよなー。ぜってー俺の方が先だったと思うんだけど」
兄と衛輔は何かと張り合っていた。
足の速さはもちろんのこと、食事の量やテストの点数に至るまで、ありとあらゆることで2人は競争するのが常だった。
「義明にも会いたいな。眞莉亜さんも。眞莉亜さんめっちゃ美人になってんだろうな~。 ほら、この頃からもう完成されてるじゃん」
言って衛輔が指さした姉の眞莉亜は今より若干幼い顔立ちをしているものの、『美人』という形容詞がぴったりだ。
祭りの時の写真なのか、明るい水色の浴衣を着ている。
その姉の横には、子供らしいピンクの可愛らしい浴衣を着た美咲の姿もあった。
「……あれ? これはなんのお祭り……?」
それまで、どの写真を見ても、その時の事を思い出せていたが、何故かそのお祭りの写真だけは、いくら思い出そうとしても少しも思い出せなかった。
「あ……。……ええと、次の写真は?」
守が強引にページをめくり、話題は次の写真へとうつってしまった。