第44章 久しぶりの団欒
「真由美さん、それってもしかして」
「…さぁ、どうかしら。たまたま同じ紙袋なのかもしれないし……」
正方形に近い形の紙袋には、左上の端からちょうど真ん中あたりまで、紫の小花の絵がちりばめられている。
所々金箔のようなものが押してあり、上品な雰囲気のものだ。
どこかの店名やブランド名が入ったものではなく、真由美も美咲も、それまで見たことのないものだった。
真由美の言うように、たまたま同じデザインの紙袋なのかもしれない。
ただ、そう思うにはタイミングが良すぎて、2人ともかすかな不安がよぎった。
ちょうど着替えを終えた守がリビングに再び姿を現したところで、真由美は守に詰め寄った。
「あなた、この紙袋はどうしたの?」
「ああ、それな」
真相を早く知りたい真由美達の気持ちとは裏腹に、守はのんびりと冷蔵庫へ向かう。
ゆっくりと扉を開けて麦茶を取り出したところで、守はまた口を開いた。
「会社の前で、織部さんって方にお会いしてな。美咲ちゃんのお祖母さんの家の人だって言ってたけど」
「それで受け取って帰って来たの?!」
「え、あぁ、まぁ、うん」
真由美の剣幕に、守は怯えて若干後ずさった。
信じられない、と大きなため息をつく真由美に、何か悪い事をしたかな、と守はおそるおそる尋ねた。
「悪い事をしたかな、じゃないわよ。その人に何て言われて渡されたのよ、これ」
「ええと、美咲ちゃんがお世話になってます、って。色々面倒を見てもらっているから受け取ってくださいって」
「そんなの突っ返せばよかったのよ!」
「何をそんなに怒ってるんだよ。くれるって言うんだからもらっておけばいいだろう」
「そういう問題じゃないのよ」
口をへの字に曲げて怒りの収まらない様子の真由美に、守は「一体何が問題なんだ」と、ぽりぽりと頭をかいた。
「別にそんな大したことじゃないだろう? お菓子か何かだろうし」
「中身はどうでもいいのよ。あのお宅と関わりたくないだけ」
「あのお宅って?」
両親のやり取りに、衛輔が首をつっこむと、真由美はまた眉間に深い皺を刻んだ。
「子供は口出ししないでいいの」
「目の前でこんだけうるさく言われたら気になるっつうの」
「それもそうだ。もうこの話はやめよう」
「あなたねぇ……!」
「母さん、美咲ちゃんもいるんだからさ」