第44章 久しぶりの団欒
バレー部の誰もが2人の関係を知ってしまったとなっては、しばらく東峰も黒崎も気まずい思いをしそうだ。
そう考えると、自分の事ではなくとも居心地が悪くなった気がして、谷地は何度も、もぞもぞと座り直した。
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一方、渦中の美咲はというと。
迎えに来た夜久の母親──夜久真由美の車内の助手席に収まっていた。
ずいぶん昔に会ったきりだった真由美は、美咲を車に乗せてからというもの、ずっと喋り通しだ。
昔と変わらずお喋り好きな真由美に、助手席の美咲は昔を思い出しながら話に興じた。
しかし、途中からやたらと美咲の携帯にメッセージが届いたことを知らせる着信音が何度も鳴り出すと、さすがに真由美も気になったのか、話を中断した。
「お友達から?」
「あ、部活の先輩達からみたいです……」
せわしなく鳴る着信音。
美咲が携帯の画面に目を落とした今も、ひっきりなしにメッセージが届く。
ラインを開くと、清水と菅原とからメッセージが届いていた。
ほとんどは菅原からのメッセージだったが、さっと目を通した美咲は、どちらも同じ事についてメッセージを送ってきていることに気づいた。
2人とも、東峰と美咲が付き合いだした事に対する祝福のメッセージだった。
(…なんで2人とも知ってるんだろう。旭先輩が話したのかな? それともあの時見られてた?)
美咲の疑問は、菅原からのメッセージを読んでいくとすぐに解決した。
それとともに、東峰と美咲が付き合い始めた事が、すでにバレー部中に伝わってしまった事も分かった。
『嬉しくてデカい声で広めちゃった。ごめん』
菅原からのメッセージに、困った顔で美咲はため息をついた。
複雑な表情の美咲に、真由美は心配そうに声をかける。
「…大丈夫? 何かトラブルでもあった?」
「いえ、大丈夫、です」
大丈夫、と言える状況ではなかったが、幸い、自分はその場にいない。
きっと今頃東峰は気まずい思いで車内で過ごしているに違いない。
そう思うと、なんだか申し訳ない気持ちに美咲はなっていた。
菅原達へを返事を送って少しすると、またメッセージが届いた。