第44章 久しぶりの団欒
「美咲ちゃんと、うまくいったってこと、だよな」
菅原が東峰の表情をうかがうように尋ねると、東峰は少しはにかみながら頷いた。
「……っ、マジかぁ!! 良かったなぁ、旭!」
今までずっとそばで東峰と黒崎の恋の行方を見守ってきた菅原にとって、これ以上ない嬉しい話題だった。
そのせいか菅原の祝福の声は思いのほか、車内に響いた。
「何スか? 何があったんすか?」
「何かいいことあったんすか、旭さん」
菅原の大声に、東峰達の後ろの席に座っていた田中と西谷が、座席からひょこっと顔をのぞかせた。
東峰と菅原を見下ろす形で、田中と西谷の目は何か楽しそうなことでもあったのかと興味津々の色を浮かべている。
先ほどまでの眠気はどこかにとんでしまったようだ。
「旭と美咲ちゃんが、ようやくくっついたんだってさ!」
菅原のよく通る声が、また車内に響いた。
一拍間があった後、田中と西谷のまた後ろから、他の2年生達も顔を出して、大騒ぎを始めた。
「おおお?! マジっすか!!?」
「えっ、つうかまだ付き合ってなかったんすか?!」
「いつそんな事になったんすか、旭さん!」
「どっちから?! どっちが告ったんすか?!?」
後輩達の矢継ぎ早の質問に、東峰は困り果てた顔で菅原を見る。
菅原は悪びれる様子もなく、にししと笑っている。
どんな経緯で付き合うようになったのか、菅原は後輩達と一緒になって東峰に詰め寄った。
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急に騒がしくなった車内に、うとうとし始めていたマネージャー2人の意識は呼び戻された。
聞き耳をたてずとも2人の耳に飛び込んできたのは、東峰と黒崎が付き合いだした、という話題だった。
後方の席では当の東峰が、他の部員達に質問攻めにされているようで、時折わっと部員達の声がわきあがっている。
「…美咲ちゃん、良かった……」
清水と谷地は同時にそう呟いた。
同じことを呟いた2人は顔を見合わせて、笑みを浮かべた。
「うまくいって良かったですね、美咲ちゃんと東峰さん」
「うん、本当良かった。…しばらくは、この話題で騒がしくなりそうだね」
「そうですね…美咲ちゃん、帰ってきたら大変だぁ……」
この騒ぎでは、部員はおろか顧問の武田先生と烏飼コーチの耳にも届いてしまっているだろう。