第43章 合宿の終わりと、恋の終わりと、
「え……? どういう、ことですか? 旭先輩が、私を、好き……?」
そんなはずないでしょう、とでも言いたげな感じで、俺も夜久の二の舞になるのかなぁという思いが頭をよぎった。
それでも俺は、自分の想いを噛み締めるように、もう一度黒崎への想いを口にしていた。
「黒崎の事が、好きなんだ。俺の彼女になってほしい」
「……っ」
みるみるうちに黒崎の顔が真っ赤になっていく。
俺の目を見ていた黒崎の目はあちこち宙を彷徨って、ひとしきり彷徨った後、ちらりとまた俺の目に戻ってきた。
心臓の音が急にドッドッと音を立て始めて、うるさくなった。
黒崎の口から返事をもらえるまでは、結果は分からない。
反応は悪くない気がするけれど、ただ2人続けて告白されたからかもしれないし。
言葉になるまでは、ぬか喜びしちゃいけない気がして、最悪フラれた時のことも予想しながら、黒崎の返事を待った。
「……私も、旭先輩の事が、好きです」
「……!!!」
黒崎の口から「好き」の言葉が出てきたのが先だったかどうか、よく覚えていないけれど。
気が付いたら俺は自分の腕の中に、ぎゅっと黒崎を閉じ込めていた。
お互いの体はずいぶんと熱を帯びていて、じりじりと焼け付くような太陽にも負けず熱かったのを覚えている。
俺が抱きしめるのと同じように、黒崎も細い腕を俺の背中にまわしてぎゅうっと抱き着いてくる。
その動作ひとつだけでも、愛おしくて仕方なかった。
「…嬉しいです。夢みたい」
ポツリと、黒崎が腕の中でそう呟いた。
「私、ずっと旭先輩の事好きでした。…先輩に出会った、あの時から、ずっと」
その言葉に、胸を鷲掴みにされてしまった。
これほどまでの殺し文句があるだろうか。
好きな子に、こんな事を言ってもらえるなんて、俺の方こそ夢みたいだ。
「…ありがとう、俺も嬉しいよ。でも黒崎」
「?」
「夢じゃないよ」
これは、夢なんかじゃない。
現実なんだ。
そう、自分にも言い聞かせたかったから。
そっと体を離して、黒崎の熱を帯びた目を見つめる。
少ししてから、ゆっくり顔を近づけて、優しくついばむように唇を重ねた。
小さな音をたてて離れた唇が名残惜しい。