第43章 合宿の終わりと、恋の終わりと、
それが本心からの笑顔でないことは明白だった。
「…話、聞いてくれてありがとう。…それから……無理矢理キスして、ごめん。ちょっと…いや、だいぶやりすぎた。なんか気持ちが先走ってて……」
「……うん……」
妙な間があって、私も衛輔くんも気まずい思いで地面に目をやる
。
「……俺、先に行ってるわ」
頭をかきながら、衛輔くんは「じゃあな」と言って皆のいるところへ駆け出して行った。
私も皆の所へ戻らないといけないけれど、なんとなくすぐに戻る気になれなくて、しばらくその場に残ることにした。
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*東峰side*
夜久と黒崎の一部始終を見てしまった。
着替えに行った黒崎の後を、こっそりと夜久がつけていったのを見たから、何かあるんじゃないかって、俺も2人の後をつけてしまったんだけれど。
夜久が、まさか告白するとは思っていなくて、声をかけそびれてしまった。
真剣な告白の場面に、割り込むことも出来なかった。
そうしたら、夜久が。
黒崎に、キスをして。
頭が真っ白になって、思わず壁の後ろに隠れてしまった。
見てはいけないものを見たような気がして。
その後は、壁越しに2人の会話を聞いていた。
そういうの、よくない事だって分かってはいたけど、聞かずにはいられなかった。
黒崎は夜久の告白を断った。
ホッとしたのと同時に、夜久の気持ちを思うと胸が痛くてたまらなかった。
告白するって、並大抵の勇気じゃ出来ないと俺は思う。
勇気を振り絞った結果、断られたらと思うと、怖くて自分には到底無理だと思ってしまう。
傷つくのも、傷つけるのも嫌だから、今まで告白されたら全部受け入れていた。
だから、NOと言われることがあんなにも胸が痛むことだって、今まで想像することなくて。
「…のぞきとはいい趣味してんな、東峰」
「わっ!」
「俺はちゃんと気持ち伝えた。次はお前の番だぞ」
「えっ……」
「えっ、じゃねぇよ。…お前、いつまで自分の気持ち伝えねぇつもりなの? あんまり待たすんじゃねぇよ美咲ちゃんを」
「……」
恋敵に、背中を押されるとは思ってなくて、言葉が出てこなかった。
そんな俺にエールを送るかの如く、夜久は力いっぱい俺の背中を叩いた。
「そんで、早くお前もフラれろ!」