第43章 合宿の終わりと、恋の終わりと、
「2人とも謙遜しすぎだよ。十分力になってるし、助かったよ。また帰ってからもすぐ部活だけど…これからもよろしくな」
「…はいっ!」
私も仁花ちゃんも、今度は力強く頷いた。
本当に旭先輩にはかなわない。
優しくて、強くて、憧れの大好きな先輩。
この合宿で、私は改めて自分の気持ちをかみしめていた。
「すいませーん! まだ肉ありますかー?!」
旭先輩の言葉に感慨にふけっていると、急に大きな声が背後から聞こえた。
声の主はお肉を求めて私達のいるコンロまでやって来たみたいで、振り返るとすぐ後ろにその人物の姿があった。
「わっ!」
「えっ?」
振り返った私の視界は真っ白になった。
すぐ目の前に、声の主が来ていたからだった。
お肉のことしか頭になかったからなのか、声の主は私の姿を視界にとらえていなかったようで、気が付いた時にはどん、と軽い衝撃が走っていた。
そして同時に、頭から冷たいものを浴びせられていた。
「ごめん!!」
白いシャツしか見えなかったところに、ぬっと、リエーフ君の顔が現れた。
お肉を求めていたのは、リエーフ君だったようだ。
彼の手には、空になった紙コップが握られている。
ぶつかった拍子にお茶をこぼしてしまったらしい。
それを私が全部かぶってしまったみたいで、ポトポトと髪の毛から雫がしたたっている。
「見えてなかった!! ごめん、美咲ちゃん」
身をかがめて必死に謝るリエーフ君が少し可愛く見える。
幸い、かぶったのは熱いものじゃなかったし、着替えもある。
大丈夫だよ、と返そうとした時、リエーフ君の背後から衛輔くんが「リエーフゥゥゥ!!」と叫びながら近づいてきた。
「美咲ちゃんうちのリエーフがすまん! おいリエーフ! お前ちゃんと周り見て動けよ!!」
「すいません。でも小っちゃくて見えなかったんですよ」
「あぁ?! 肉のことばっか考えてるからだろうが!!」
衛輔くんのグーパンチがリエーフ君の背中を襲った。
「いったぁぁ!! 何も殴ることないじゃないですか!!」
「うるせぇ! 反省してるように見えねぇからだよ!」
「酷いっす。反省してますよぉ、オレ」
衛輔くんとリエーフ君がやいやいと言い合いを始めてしまって、私は口を挟む隙がなくなってしまった。