第43章 合宿の終わりと、恋の終わりと、
「ちょっと落ち着いたらおにぎり配ろうか。…って雪絵、あんたおにぎり食べすぎ!もうこんなに減ってるじゃん」
「ごめん~でもお腹すいちゃって」
大きなおにぎりをぺろりとふたくちくらいで食べてしまった白福さんを、みんなビックリした顔で見ていた。
細いのにどこに入っていくんだろう、ってくらい、白福さんはその後もモリモリとおにぎりを食べていた。
バーベキューが始まってしばらくして、少しだけ部員たちの勢いも落ち着きを見せた。
そろそろ私達もお肉をもらいに行こうと、仁花ちゃんと2人で近くのコンロへと向かった。
「何かとりましょうか?」
声をかけてくれたのは生川高校の主将さんだった。
その声を気づいた周りの人達も私達を気にかけてくれて、気が付けば私と仁花ちゃんはぐるりと周囲を部員達に囲まれていた。
「はひっ、く、食われる……?!」
「仁花ちゃん?」
私達を取り囲む長身の男子の迫力に緊張しているのか、仁花ちゃんはぶるぶると青ざめた顔で震えている。
私も仁花ちゃんも小柄な方だから、確かに大柄な男子に囲まれると、追い詰められた獲物のような気がしなくもない。
「黒崎、やっちゃん、肉焼けたよ」
「ワタシタベテモオイシクナイデス……!」
テンパってしまっているのか、仁花ちゃんの言動がおかしかった。
「…えっ?」
旭先輩も仁花ちゃんがテンパってるのには気づいているみたいだったけれど、どうしていいのか分からないみたいだった。
困った顔で私に助けを求める旭先輩に、目だけで答えた。
「仁花ちゃん、大丈夫だよ。旭先輩だよ。お肉焼けたって」
「……はっ! す、すみません!」
「いや、ごめん、怖がらせるつもりはなかったんだけど……」
旭先輩の言葉をうけて、ぐるりと取り囲むようにしていた男子の輪が若干離れた。
他の人達は気を遣ってか、旭先輩に私達の世話を任せることにしたようだった。
「2人ともお疲れ様。1週間ありがとう」
労いの言葉をかけてくれる旭先輩に、私も仁花ちゃんもふるふると首を振る。
私は前半倒れてしまってほとんど何も出来なかった。
復帰してからも体調を気遣われて、他のマネージャーのように仕事は出来なかったし。
仁花ちゃんの方は、「まだ不慣れなことだらけで、力になれたかどうか」とこぼしていた。