第6章 GW合宿
不意にそんな褒め言葉、ずるいと思います、潔子先輩。
それもそんな美しい笑顔で。
「い、いやぁ…まだまだ、だと思ってます。もちろん今だって精一杯やってますけど…もっと何かできることあるんじゃないかなって」
「貪欲なんだね。あ、いい意味でね。そうだね…単に球出ししたり、洗濯したりだけじゃないからねマネージャーって…。私も、頑張る」
マネージャー2人で、お互い鼓舞しあったところで、調理室の引き戸が大きな音を立てた。
「はーらへったー!!!!」
入口からなだれ込むように部員達が部屋へ入ってくる。
みな空腹に耐えかねたような顔でめいめい席につく。
「うおおおおお!!!すっげーうまそー!!!」
西谷先輩達が目を輝かせながらテーブルに並んだ料理を眺めている。
いまにも皿ごと食わんばかりの前のめりの姿勢に、縁下先輩が呆れた顔で西谷先輩を見ている。
「おい、まだ食べるなよ」
「待ちきれねぇよぉ~」
縁下先輩が西谷先輩のシャツの襟をつかんで、西谷先輩の動きを制しているが、それもそう長くは持ちそうにない。
そんな西谷先輩の様子に半笑いしながら、澤村先輩が口を開いた。
「おい、みんなちょっと聞いてくれ」
澤村先輩の一言で、西谷先輩もおとなしくなる。
「腹が減ってるのは分かるが、まずは料理を作ってくれた武田先生、清水、黒崎にお礼を言おう。この4日間の食事の、献立をたてるところから食材の買い出し、全部やってくれている。俺達が気持ちよく合宿出来るのも、マネージャー、そして先生の助力があってのことだ。みんな、それを忘れないでほしい」
澤村先輩のその言葉に、部員達の視線が一斉に私達に集まる。
急に注目されて緊張する。
身体が自然と強張るのが分かった。
澤村先輩がそんな風に私達のことを思ってくれていることに、ひどく感動して、ちょっぴり泣きそうになる。
涙もろいのは自覚しているものの、今泣くのはなぁ、と溢れようとする涙を必死に押し込める。
なんとか涙はこぼれなかったものの、目は潤んでしまっていた。
潤んだ目をなんとか乾かそうと、何度かまばたきをする。
そのうちに泳いだ視線は、旭先輩の視線とぶつかった。
旭先輩は私と目があうと、いつものあの優しいふにゃりとした笑顔を見せてくれた。
つられて私もふにゃりと笑う。