第6章 GW合宿
旭先輩の隣に座っていた菅原先輩が、私の視線の先に気付いたのか、私と旭先輩の顔を交互に見やって、にやりと笑った。
どこかいたずらっ子みたいなその笑みに、少しだけ背筋が寒くなったのは気のせいだろうか。
「いただきまーす!!!」
合掌を終えるなり、ご飯をかきこむ部員達。
その中でも日向、西谷先輩、田中先輩は凄い勢いでご飯をたいらげ、早々におかわりの声をあげたのだった。
月島君や山口君はあっけにとられたようにその食べっぷりを見ていた。
「そんなに食べてるのに、成長には繋がらないんだね」
「う、うるせー!!!」
いつもの毒舌を月島君が吐くと、日向はそれにおもしろいくらい直球で反応する。
この反応が見たくてわざと毒舌かましてるんじゃないかってくらい、月島くんは日向につっかかる気がする。
「おい、月島!お前もっと食え!!」
「いや、僕そんなに食べられないんで…」
「食え!!無理してでも食え!!せっかくの潔子さんと美咲ちゃんの手作りメシだぞ!!勿体ねぇ!お前が食わないならよこせ!!俺が食う!!」
「おい西谷!月島の分横取りするな!!」
部活中以上に賑やかな部員達の横で、潔子先輩と並んで食事を取る。
またも気を回してくれたのか、私の座席は旭先輩の隣。
旭先輩の横の菅原先輩も、何故か親指をたててウインクしてくる。
さっきの、いたずらっ子みたいな笑みの意味が、ちょっとだけ分かったような気がする。
多分、菅原先輩もこの座席位置に一枚噛んでる。
何も知らない旭先輩は、隣に座った私にまたふにゃりとした笑顔を向けてくれて、「美味しいごはんありがとな」なんて優しい言葉をかけてくれるものだから、嬉しい反面ちょっぴり罪悪感を感じてしまう。
お膳立てしてくれるのはとてもありがたいことなのだけれど、旭先輩のふにゃふにゃ笑顔を見ていると、それがなんだか悪いことのように思えてならない。
「美咲ちゃん、ファイト」
こそっと潔子先輩が耳元でそんなことを言うものだから、私は動揺して箸を落としてしまった。
ついでに湯呑を盛大に倒して旭先輩にお茶をひっかけてしまった。
「っ、ごめんなさい!!」
「あー、大丈夫だよ。気にしないで」
手持ちのタオルで旭先輩の太ももあたりに染み込んだお茶を拭きとろうと試みるけれど、すでにズボンはじっとりと濡れていた。