第6章 GW合宿
「!もう10時!」
いつもよりハードな練習に、見ているだけのこっちもへとへとになりながら、あっという間に立ってしまった時間に驚く。
集中していると時間が経つのは早いと言うけれど、それにしたってもう2時間30分も経っているなんて。
急いで調理室に向かい、昼食の準備に取り掛かる。
まだ清水先輩と武田先生は来てないようだ。
料理は段取りが肝心。
私は調理する順番に食材を並べ、調味料を準備し、流れ作業で調理できるように配置した。
「おっ、もう準備してるんですか!」
ガラガラと引き戸が音をたて、武田先生と潔子先輩が調理室に入ってくる。
並べられた食材や調理器具を見て驚いた顔をしつつも、2人は調理の準備に入った。
綺麗に並んだ食材たちを目の前にして、私は自分でも分かるくらい不敵な笑みを浮かべていた。
山積みになったじゃがいもにんじん玉ねぎ。
「ふふふ、腕がなりますね……」
「黒崎さんってそんなキャラだったっけ…?」
武田先生に不審がられつつ、私は大量の野菜と戦った。
ひたすらに皮をむき、ひたすらに刻んだ。
さすがに量が尋常ではない。
普段の料理の倍以上の疲労を感じながらも、なんとか昼食の準備を終える。
「これ、去年まで潔子先輩だけでやってたんですか?」
「去年は何人か部員が手伝ってくれてた。…けど、一人でやる方がはかどったかな…」
「ああ…なんとなく想像つきます…」
最近は『男子、厨房に入るべからず』なんて家庭は少なくなっただろうし、料理のできる男子も少なからずいるだろう。
が、やはり圧倒的に女子に比べてその数は少ないだろうことは想像にかたくない。
まして田中先輩と西谷先輩の存在が、潔子先輩の手伝いをややこしくさせてそうだ。
手伝いをする部員の邪魔をしている二人の姿が頭に浮かぶ。
「今年はホント、美咲ちゃんがいて助かったよ。手際がいいし、料理し慣れてるし」
「えへへ、料理だけは自信を持って得意だって言えます」
「ふふ。料理だけじゃないと思うけど?」
「え?」
潔子先輩がうっとりするような笑顔を私に向ける。
「マネージャー業、すごく得意だと思うよ美咲ちゃん。向いてるんだと思う。みんなもそう思ってるよ。澤村も褒めてた。安心して来年からのバレー部任せられるって」
不覚にも、うるっときてしまった。